2019年の10月から電気通信事業法の改正、つまり携帯電話料金の内容が法律によって義務化されたため、携帯電話料金のしくみが大きく変わりました。
主な変更点として挙げられるのが分離プランの義務化です。
ここでは法律など難しい話は抜きにして、分離プランとは何か?10月から具体的に何が変わったの?料金や割引はどうなったの?といった疑問について分かりやすく解説します。
分離プランとは?
端末と通信料の「完全分離」
「端末の購入」を条件とした通信料の割引が禁止に
これまで携帯の大手キャリアでは機種の購入を条件とした割引が一般的でした。これは機種代金に応じて毎月一定の額を通信料から割引くというもの。
例えばドコモの月々サポート、auの毎月割、ソフトバンクの月月割など(現在は新規受付終了)。これらのサービスにより、高額の端末でも実質的に機種を安く購入することが可能でした。
つまり、
「購入した機種代金に応じて通信料を割引する。」
↑この関係性が機種と通信料(プラン料)の間にはあったんですね。
この端末と通信料の関係性を「分離(ぶんり)」したプランのことを「端末分離プラン」または「分離プラン」などと呼ばれています。
そして2019秋以降、全キャリアでこの仕組み、「分離プラン」が法律で義務化されました。つまり端末購入を条件とする通信料の割引を禁止した。ということ。
割引がない代わりに元々の通信料が2~4割安い。
↓下は旧プランと分離プランを比較した図です。(分かりやすく仮の価格にしています。)
上図からもお分かりの通り、分離プランでは機種の購入・未購入にかかわらず通信料からの割引がありません。その分、通信料自体の価格が安めに設定されていますね。
「機種代金から」の値引きなら条件付きでOK
機種購入を伴う通信料からの割引は一律禁止となりますが、機種代金からの値引きについては条件付きで許可されています。
プランの継続利用の条件がない場合に限り、
機種代金から最大2万円まで
の値引きが許可されます。(下表参照)
条件 | 割引 | |
---|---|---|
通信料から | 端末代から | |
端末の購入 + 継続利用を条件とするプラン利用 |
禁止 | 禁止 |
端末の購入 + 継続利用を条件としないプラン利用 |
禁止 | 最大2万円 |
「上限2万円」の例外となるケース
上で述べた通り、通常はプランの継続利用の条件がない場合に限り機種代金から最大2万円までの割引額ですが、状況によっては例外があります。
例外となるケースは以下の通り。
ケース | 割引内容 |
---|---|
下取り割などの対象端末 | その買取額を超えない割引 |
価格が2万円以下の端末 | 割引後の価格が0円にならない範囲の割引 例:20,000円の機種だと、最大19,999円の割引。つまり割引後の価格は1円 |
在庫端末 | 最終調達日から24か月経過で半額までの割引 |
在庫端末(製造が中止されたもの) | 最終調達日から12か月経過で半額までの割引 |
最終調達日から24か月経過で8割までの割引 | |
通信方式や周波数の変更・移行により端末の使用ができなくなる方が新サービスに移行するために購入する端末 例:キャリアで3Gサービスが終了する際に、3G端末のユーザーが4G端末を購入する場合 |
割引後の価格が0円にならない範囲の割引 |
なぜ「端末分離」が必要なの?
総務省のねらいは?
分離プランを義務化する総務省の思惑は何なのでしょう?ユーザーにどのようなメリットがあるのでしょうか?
シンプルに。安く。自由に。
まず料金体系がシンプルになるため、ユーザーにとって分かりやすくなる。というのが一点。
そして4年縛りなど長期の囲い込みを規制し、さらに違約金を安くしたり、縛りの加入・未加入による価格差を少なくすることで、携帯電話会社を自由に選びやすくなります。
そして上記の改善が行われることでキャリア同士の価格競争を促すことにもなりますね。
つまり総務省的には、もっと携帯電話料金を安く。そして会社を気軽&自由に選択できるようにしよう。という狙いがあるわけです。
みんな平等に。
さらにもう一つの狙いが「料金の公平化」です。これまで割引やキャッシュバックは、
- 機種を購入する
- MNP転入する
- 割引の存在を知っている(リテラシーが高い)
といった方だけが特典を受けられることがほとんどのため、
「すっとドコモ。プランは良く分かってません。機種もめったに購入しません。」
というような方からしたら、不公平に感じるのは当然ですね。
割引によって機種を購入する人だけがメリットを受けられるのではなく、みんな平等に。不公平をなくすべきだ。というのが総務省の見解なのです。
割引をなくし、そのぶん通信料を2~4割安くすることで、機種購入の有無にかかわらず平等にスマホ・携帯をお手頃価格で利用できるように。というのが目的でもあります。
10月から何が変わった?
ユーザーにとって、分離プランが義務化されたあと具体的に何が変わったのか?をメリット・デメリットに分けてまとめてみました。
端末分離の「メリット」
●縛りありorなしによる基本料金の価格差が170円以内に。
以前は2年縛りに加入の場合と未加入の場合で通話基本料金が大きく違いました。下記のソフトバンクの例をご覧ください。
契約期間 | 内容 | 通話基本料金 |
---|---|---|
2年契約 | 2年間の縛りがある自動更新あり更新月(2年毎に3か月間)以外に解約した場合は違約金がかかる | 1,200円 |
2年契約フリープラン | 2年間の縛りがある自動更新なし2年経過後は、いつ解約しても違約金がかからない | 1,500円 |
2年契約なし | 2年間の縛りがない自動更新なしいつ解約しても違約金がかからない | 3,900円 |
2年契約「あり」と「なし」とで、基本通話料金に2,700円もの価格差があったことが分かります。2年縛りに加入したほうが安くなったということですね。
10月からこの価格差が最大170円までに縮まりました。2年契約なしを選ぼうが2年契約ありを選ぼうが、料金的には大きく変わらなくなりました。なおソフトバンクでは2年契約あり・なしの価格差自体を撤廃しています。
●違約金が安くなった。
携帯電話を解約したりMNPを行う場合にネックとなるのが「違約金」。この違約金が不要なのは更新月(下図参照)のみ。それ以外の期間に解約・MNP転出した場合は、9,500円もの違約金を支払わなければなりませんでした。
携帯キャリアの更新月(2年契約ありの場合)
法改正の施行により違約金は最大でも1,000円までに減額されました。これで今まで以上に気軽にキャリア間のMNPが出来るようになりますね。
au、ドコモでは違約金を上限ギリギリの1,000円に。ソフトバンクは違約金自体を撤廃しています。
端末分離の「デメリット」
●高額機種が買いづらくなった。
分離プランでは月々サポートや毎月割、月月割など、機種代金に応じた割引がなくなるため、機種を購入した場合、その価格が月々の請求額に直接反映されます。
高額の機種を購入する場合、旧プランよりも毎月の請求額がアップする可能性が高いのです。これまでのように最新の高額機種を気軽に購入することが出来なくなりました。
ただし各キャリアの新プラン(下記)では、この分離プランに対応済みなので、既にこれらのプランに加入している方は大きな変更点はありません。
ドコモ |
ギガホ ギガライト |
---|---|
au |
新auピタットプラン フラットプラン7プラス auフラットプラン25 Netflixパック フラットプラン20 auデータMAXプラン |
ソフトバンク |
ウルトラギガモンスター+ ミニモンスター |
●販売店のキャッシュバックが減額された。
先ほど述べた通り、プラン継続利用を条件としない機種代金からの値引きや現金還元については「キャリア」と「販売店」合わせて最大2万円までとなりました。
つまり、仮にキャリア側で2万円の割引キャンペーンを利用する場合、販売店のキャッシュバックは適用できないということです。
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この記事のまとめ
最後に「分離プラン」を含む10月からの法改正についてのおさらいです。
- 分離プランとは「機種」と「通信料」の関係を廃止(分離)した料金プランのこと。2019年10月から義務化され、機種の購入を条件とした通信料の割引が禁止になった。
- 分離プランの導入により「機種の購入を条件とする割引」がなくなった。
- 継続利用を条件としないプランに限り「機種価格」から最大2万円までの割引が許可される。(例外あり)
- 分離プランは機種の購入による通信料割引がなくなる代わりに、プラン料金自体の料金を従来に比べ2~4割程度安くしている。
- 違約金が1,000円以下になった。
- 縛り(定期契約)のあり・なしの場合の価格差が170円以下になった。
端末分離の早見表
10月からの変更内容を、さらに分かりやすく図にまとめてみました。
最後に
いかがでしたか?
分離プランを含む10月からの改正内容はけっこう複雑なのですが、なるだけ分かりやすく解説したつもりです。
機種購入時の割引が無くなったのは痛いですが、長期的に見ればユーザーにとってメリットのあるものだと思います。
今後は楽天も本格的にキャリア参入。価格競争が活発になって、お財布に優しい携帯料金になることを期待したいですね~。
それではまた!